FERMENTECHについて
こんにちは。FERMENTECH(ファーメンテック)と申します。
ここでは私がなぜFERMENTECHを立ち上げたか、その理由をお伝えしたいと思います。
社会的意義の側面:日本のクラフトビール市場における原料事情
日本のクラフトビール市場はここ数年で大きな成長を遂げてきましたが、原料事情はまだまだ輸入に頼っています。
日本ではアルコール度数1%以上のお酒を免許なく醸造することは法律で禁止されており、Home Brewing(自宅醸造)市場がありません。
また数年前まで地ビール・クラフトビール会社の数は限られ、大手以外のビール生産量が少ないこともあり、
麦芽・ホップ・酵母の原料事業は市場全体として小さく、参入ハードルが高い状況にありました。
市場の大きさ以外にも大麦の作付面積や麦芽化設備、ホップのブリーディング環境や農家の減少など、
大小様々な課題や法律、そして日本の歴史がこの構造を作ってきました。
一方で欧米諸国に目を向けると、原料の目覚ましい革新が起こっています。
いずれの原料においても品質は格段に向上し、新しい品種も増え、それに伴って多種多様で独自性のあるビールが誕生しています。
輸入に頼っている日本もこれらの恩恵を被ってはいますが、それでも流通している原料は限定的です。
使いたい原料を個人輸入で仕入れているブルワリーも存在しますが、多くのブルワリーで使用できる流通段階にはありません。
本来であれば造るスタイルや方向性に合わせてマッチする原料を選びたいはずですが、その選択肢が少ないのが現状です。
この日本特有のクラフトビール業界における原料マーケット構造を少しずつ変えていきたいと考えています。
そのためには様々なことが必要ですが、その一つに流通する原料種類の増加があります。
FERMENTECHではその一翼を担いたいと考えておりますが、何故酵母なのか、についてはパーソナルな理由が関係してきます。
パーソナルな側面:発酵に魅せられて
私が2018年にクラフトビール会社に転職したのはもちろんビールを造りたかったからですが、
深く掘り下げて知識を深めていくうちに私の知的好奇心が発酵に向かっていきます。
歴史を遡ってみると、近代に入ってようやく口にするようになった食肉や一部の野菜よりも、遥か昔から人々はお酒を飲んでいます。
お酒に限らず、食料を長期保存させることを主目的として、世界中のいろんな場所で発酵食品が誕生してきました。
そこから現代までの課程において、微生物の発酵環境を最適化し、その結果その土地の食文化や習慣を作り上げてきました。
「微生物による発酵が太古の昔から存在し、世界各地で固有の文化を形成しながら現代まで生き残っている」という事実、
そこには神秘的と言いますか、奇跡のような力を感じるのです。
こうやって私の興味関心が微生物による発酵に向かっていきます。(この辺りの話はまだまだありますが、ここらで割愛させてください)
発酵全般に興味を持っていますが、ブルワーだったこともありビール酵母についてはよく勉強します。
近年では発酵を通して特定の前駆体から側鎖を遊離させる酵素活性を持つ酵母や、
発酵と同時に乳酸を生成するLachancea酵母にも注目が集まりましたが、
その土地を醸したかのような味わいを生む野生酵母には特に魅力を感じています。
まだまだ解明されていないことも多ければ、野生酵母も多種多様、
果て無き世界なんて言ってみれば何もかもそうだと思いますが、
迷い込んだ果て無き世界が、知れば知るほどワクワクする発酵の世界で良かったと、心の底から思っているのです。
まとめると...
やや冗長気味な文章になってきましたので、本旨に立ち返って創業理由をまとめますと、
・日本のクラフトビール市場の原料事情を勘案した時に必要な事業だと思ったから
・発酵が好きだから
醸造家とは多くの方が好奇心の塊で、ビールの多様性や奥深さに惹かれてブルワーになった方もいらっしゃると思います。
FERMENTECHは原料面で醸造家の方の選択肢を増やし、
「使ってみたい」「造ってみたい」が一つでも実現できるような構造をつくり、
日本のクラフトビールのさらなる多様化と、文化の定着・醸成・持続化を実現できるように、これから鋭意活動して参ります。
何卒よろしくお願い致します。